喧嘩番長


 目が覚めたら、俺の制服がブレザーから学ランになっていた。

 俺はベッドの前のクローゼットに学生服をかけているので、ベッドから起きた途端にそれが目に入るのは至極当然のことなのだ。
 一瞬頭をひねらせたさ。だが、うちには何と言ってもハルヒがいる。あの、不可能を可能にする女、涼宮ハルヒがいるのだ。学生服がいつものブレザーから学ランに変わっていてもおかしくはないのだ。
 このおかしな現象を体験してこその、SОS団団員なのだからな。
 俺はある意味達観した気分で、その見慣れぬ学ランに袖を通した。
「随分と、くたびれた学ランだな」
 薄汚れた感の学ランは、ところどころ毛羽立っていた。俺の設定が通常の高校一年生ならば、このくたびれ具合は少しおかしい。よもや三年とかじゃないだろうな?しかし、顔を洗うために鏡を覗いてみても以前の俺とは変わらぬようで、学ランの汚れ具合には見当も付かず首を捻るしかなかった。
 とりあえず普通どおりの朝食(俺は学生服が違うというだけ)を済ませて、いつものように自転車に乗って学校へ向かう。
 よもや学校まで別の場所になってはいないだろうかと危惧していたのだが、段々に増えていく学生達を見れば同じように学ラン着用だったので、ほっと一安心して自転車をいつもの駐輪場に置いた。
 しかし、普段とは様相を変えたのはここからだった。

「?」

 何故だ…。
 あ、まただ…。
 どう見ても、普通の朝の登校とは完全に違う。
 俺はあまりの状況の変化に、さっきからびくびくしっぱなしだ。はっきり言って、朝倉にナイフで切りかかられた時と同じくらいに動揺している。
 そんな周囲の様子にびくついている俺に、声にもハンサムが滲み出ているような聞きなれた声で呼びかけられた。
「おはようございます」
「お、おう、おはよう」
 古泉だ。学ランなのは同じ、だがその顔にはいつもの爽やかスマイルが浮かべられていて、俺はほっとして肩の力を抜いた。
「これは一体、何なんでしょうね?」
「良かった、おまえはこの変化前の記憶を持っていたか」
「ええ、朝目覚めたら学生服が学ランに変わっていて、いささか驚きましたよ」
 涼宮さんですね?と声を落として聞いてきたので、俺は当たり前だろうと肩をすくめて苦笑いで返してやった。
「原因はおわかりですか?」
 ああ、何となくは実は見当がついている。実はハルヒは昨日学校を休んだのだ。それはこの古泉も知っている。そして、こいつは俺にハルヒに具合は大丈夫かと心配するメールを送ってやれとたきつけてきたのだ。
 俺に散々キスしたその口でだ。
 口では当然の義務だと言いつつ、その目の奥では複雑な色を浮かべながら。
 大体、おまえに言われなくてもメールの一つぐらいはしてやるつもりだったのだ。クラスメイトとして、そして親しい友人として。それを面倒なことを絡めて言ってきやがったので、俺は昨日は大変不機嫌だったことをここに記しておこう。
 家に帰ってから古泉に言われたからではなく、俺はきちんと自分の言葉で具合は大丈夫かとメールをした。すると暇をしていたらしいハルヒからすぐに返信されてきた。
 単なる風邪で別に休むほどではなかったのだが、微熱もあるし今日と明日は今年一番の寒さだからベッドでごろごろしている、と、そんな元気そうな内容だった。
「特に機嫌も悪そうでもなかったな」
「そうですね…。閉鎖空間も生まれませんでしたし。昨日は少しばかり警戒していたので、何もなくて良かったですよ。しかし、何も…というわけにはいかないのが、さすが涼宮さんだ」
 変なところで感心するな。
「ところで、そのメールにはこの変化の原因を記す何かがあったわけですね?」
 ああ、そうなのだ。ごろごろしていて暇だと、年上の従兄弟にもメールで愚痴っていたらしい。するとその従兄弟がお見舞いだと言って漫画本を沢山持ってきたので、今日は一日それを読むつもりだとメールでは言っていた。
「その漫画が原因なのじゃないかと、俺は疑っているね」
「なるほど、その漫画のタイトルはご存知ですか?」
 ご存知ではないが、ハルヒからのメールにタイトルが書いてあった筈だ。古泉と連れ立って話しながら携帯メールを確認していると、先ほどから遭遇している不可思議な現象がまたもや起きた。
「なあ…、こいつはどういうことなんだろうな…」
「僕だけじゃなかったんですね…」
 俺たちは何故だか、やたら朝の挨拶をされていた。
 制服は同じようだから北高の生徒なのだろうが、挨拶してくる人間達はほとんど知らない奴らばかりだ。しかも、何故かあらかた男ばかり。
「あの、今僕らに挨拶をした人、絶対上級生だと思うのですが」
「ああ、というか、うちの学校ってあんなに柄の悪そうな生徒はいないだろうが」
 そうなのだ。俺たちにやたら元気に「っざ〜す!」と、しかもお辞儀つきで挨拶をしてくる輩は、アーケード街などでたむろしていたら確実に目を合わせないようしたい連中ばかりなのだ。
 そんな柄の悪そうな奴らが、何故だか俺たちにとても礼儀正しい。
 俺たちの設定は一体なんなんだ!?
「あ、キョンく〜ん、古泉君。おはようございます」
「朝比奈さん」
 どうやら朝比奈さんもいつもと変わりなさそうだ。ただ、制服が少し違っている。スカートと襟の色が、鮮やかなブルーから黒のクラシカルなものになっていて、ちなみにそれ以外は特に代わり映えの無いセーラー服だった。
 だが、何故か朝比奈さんは涙目になっている。
「あ、あ、あの、なんかおかしいんですぅ〜、怖そうな男の人達が、皆で挨拶してきて、それで、それで、女子なんですけど知らない同級生っぽい人がカバンを持ちますって言ってきて〜あたし、怖くて、いいです!って逃げてきちゃったんですけど、これって一体なんなんですか〜?」
 ああ、それは怖い目に合いましたね。礼儀正しくあろうとも、あいつらは見た目に怖い。そんな野郎どもに声をかけられては、狼に出会ったウサギのように朝比奈さんが怯えてしまっても仕方がないだろう。
「それにしても、朝比奈さんの後ろに見知らぬ女生徒が付かず離れずにいるのはそういうわけなんですね」
「ええ、別に嫌な目にあったりするわけじゃないんですけど、ああやっておうちからずっと付いてきているんです。でも、何故か私を守ってくれているみたいで、後ろを気にしながら歩いている私が車にぶつかりそうになったら腕を引いて助けてくれたり、悪い人達ではないみたい」
 ううむ、なんだろう?朝比奈さんは女生徒のボディーガード付き?という立場なのか?
 三人で連れ立って歩いているうちに、校門が見えてきた。そして長門の姿も。
「よう!」
「おはようございます」
「あ、おはようございます…」
「おはよう」
 長門の姿は朝比奈さんとは別の意味で変化していた。
「なあ、おまえのスカート丈、そんなに長かったっけ?」
 ミニスカートから膝丈程度の長さに変わっているそれは、ほんの少しだけ物珍しかったが、長門の大人しい見た目のキャラに合っていたのに、普段もそのほうがいいのではないかとうっかり思ってしまった。
「おやおや、それにしても長門さんもお付の人間が付いているんですね」
 古泉の言葉に釣られて長門の後ろを見てみれば、朝比奈さん同様に二人の同じ北高の生徒が長門の後ろに立っていた。ちなみに、こちらは男だ。柄の悪そうな雰囲気はなかったが、どこか古泉のように胡散臭さを醸し出している二人だった。
「ひどいですね、胡散臭いだなんて」
「その通りだろうが。それにしても、長門、カバン」
「持つと言われたので、持たせている。特に危険もないと判断。今日の変化の一つと考え、同調し対応の結果」
「そうか、これはこの世界の普通の出来事ってことか」
 ハルヒのみがいないSОS団のメンバーが勢ぞろいしたわけなのだが、どうやら俺たちは何か特別な役割をこの世界で与えられているようだ。
 長門の後ろに大人しく立っていた二人も、俺に古泉みたいな笑顔で朝の挨拶をしてきた。
「おはようございます、総長」


……
………
「あの、今、あなた、総長って呼ばれました?」
 ああ、俺の聞き間違いじゃなかったのか…。
 ソーチョウ?早朝?曹長?宋朝?さて、どれだ?
 頭の上に一杯ハテナマークを浮かべていると、朝の爽やかに似合わぬ怒声が突然響き渡ってきた。
「北高のキョンだな!俺と勝負しろっ!」
「はあ?」
 そこに立っていたのは、えらくガタイのいい他校の男子生徒だった。身長は古泉程度のようだが、柔道でもやってるのかその身体は鍛えられ、どっしりとした威圧感を俺達にぶつけていた。
「なあ、俺は確かに北高の生徒だから、北高と言われるのはおかしくはい。しかし、それがまるで名字のように俺のあだ名の上に冠されるように呼ばれることは、今まで一度もなかったように思われるのだが」
 何故だか俺に敵意をむき出しにしている男の神経を逆撫でしないように、こっそりと隣にいる古泉に囁いてみる。
「そうですね、しかもあなたに勝負と仰ってますよ。これは確かに漫画じみた展開ですね」
 ああ、やはり何もかもハルヒが今、暇つぶしに読んでいるあろう漫画が原因に違いない。
「てめえを倒して、俺が総長の名を奪ってやるさぁっ!!」
 出た。総長。
 なんなんだ。そんなにその総長とやらと呼ばれたいのなら、いくらでも呼んでやるし、俺には必要の無い呼称だからこの男に渡してしまってもいいのに。
 ちなみに何故か俺たちの周囲はいつの間にか北高の生徒(柄の悪い奴らと一般生徒)達が囲んでいた。俺を倒したいデカ男の後ろには、奴の仲間であろう他校の生徒も五人程いるが、あらかたがうちの生徒だ。その彼らはこんな不穏な空気にも関わらず、誰一人して先生を呼びに行こうなどとせずに、何故だか多分俺を応援しているのだ。
「総長!やっちまえっ!」
「総長に喧嘩売るなんて三百年早いんだよっ!」
「北高のキョンに喧嘩売るなんて、あいつ馬鹿じゃないの〜?」
「総長、そいつ最近うちのシマを荒らしている新参者ですから、北高のキョンの力を見せてやってください!」
 あの、皆さん。何ですか?北高のキョンってのはそんなに凄いんですか??
 た、助けてくれ〜、何なんだこの状況は…。
「どうやら、総長、つまりあなたはこの北高のシンボル的存在のようですよ?」
「冗談だろ…」
 古泉の自分は関係ないだろう的発言に軽く殺意を覚えていると、違う黄色い声援も飛んできたのだ。
「きゃ〜!古泉副総長!がんばって〜」
 …ふむ、おまえも仲間入りだ。
「副総長だってよ」
「……元より副団長という立場ですから、予想すべき結果だったかもしれません」
「どうやら、俺たちはあいつと喧嘩しないとならないらしいぞ」
 周囲に押されるように、故意に開けられた空間の中に古泉と二人で進んでいく。ああ、俺は喧嘩なんかさっぱりなのだが、俺を応援している北高の人間達のがっかりする様子が今から目に浮かぶようだ。
「古泉、おまえは腕に覚えはあるのか?」
「いえ、派手な喧嘩なんてほとんどしたこともありませんよ。身体は鍛えてはいますが、それは閉鎖空間での体力維持の為ですしね」
 つまりは俺たちは喧嘩なぞはズブの素人だというのに、あの屈強な男&仲間の五人を相手にしなければならないのだ。ああ、嫌だ。
「何をごちゃごちゃ言ってやがるっ!」
「うわっ!?」
 突然に殴りかかられ、俺は咄嗟に身体を翻した。それだけならば自分の意思であったのだが、身体を返した途端に俺の左足が相手の男の鳩尾を勝手に蹴り上げたのだ。
「か、身体が、えらく軽い!?」
「ぐはっ!?」
 見事に俺の蹴りが入ってしまった彼は、目を白黒させて口から泡を吹きながらその場にドシンと倒れこんだのだ。
 う、嘘だろう〜!???
 だが、俺の驚愕なぞ他所に、周囲はえらく沸いていた。
「さすが、総長!」
「関西連合の総長の相手をするには、小物すぎたな!」
 ああ、なんか今、新たなる呼称が俺の耳の中に飛び込んできたぞ。もうこれ以上、俺に何かの役を与えるのはやめてくれ。
 だが、沸く周囲とは裏腹に俺に倒されてしまったらしい彼の仲間達は怒りを顕にして、俺達に噛み付いてきたのだ。あ、しかも木刀とか持っているじゃないか!これはさすがにやばいと思った途端、俺の目の前で古泉の身体がさっと動き、木刀を持っている男の顎に肘鉄を一発食らわせたのだ。やたらスマートにきまったその姿に、周囲の野郎共のだみ声に負けない黄色い歓声が一斉に上がった。
「……これは、これは」
 戸惑いの声をぽつりと漏らした古泉に、こいつも無意識に動いてしまったことがわかった。
「どうやら、俺たちは相当喧嘩が強いらしいぞ」
「そのようですね。それではこの世界のセオリー通りに動いて、この方々を倒してしまうしかなさそうですね」
 ああ、まったくもっておまえらには恨みはないんだが、この喧嘩は確実に俺たちが勝つように仕組まれているのだろう。これはある種のイベントみたいなものなのだから、とりあえずさっさとこなして次のステージに進むしかない。

 朝の爽やかな校門前だというのに、そこにはぼこぼこにされた男達が積まれた小山が鎮座する羽目になった。

◆◆◆◆

 そんな出来事があったというのに、学校側は何も騒ぎにならなかった。せいぜい担任の岡部に「おう!朝の運動も程ほどにしとけよっ!」とバシンと背中を叩かれて豪快に笑われただけだった。
 おいおい、この学校はどうなんているんだ?普通、あんな喧嘩騒ぎが起こったら警察に通報ものだろうが。なのに、あんなのは日常茶飯事と授業は始められてしまった。
 授業自体はいたって普通で、きちんとハルヒの存在もある世界らしく、今日は風邪で休みと出欠簿にはそう書かれていた。俺は授業をこなし、昼休み、古泉や朝比奈さん、長門と示し合わせて文芸部に集まった。

「つまりですね、この漫画が原因なのは確かなようです」
 授業中にどうやって手に入れたのか、古泉の手には漫画本が一冊あった。俺がハルヒに教えられたタイトルの漫画だ。
「これによりますと、あなたは関西連合というこの近辺のみならず、隣県の学生達のグループのトップで、総長という役割のようです」
「隣県!?そんなに規模がでかいのか!」
「ええ、そして、僕はそのあなたの片腕、副総長というわけです。あなたの片腕、女房役だなんてとても光栄ですね」
 心底嬉しそうにするな、馬鹿が。
「朝比奈さんはマスコット、いえ、アイドル的存在のようですので、あまり現状とは変わらないようなのでご安心ください」
「はあ〜良かった。あたしも、キョン君達みたいに喧嘩しろ〜なんてなったら、どうしようかと思ってました〜」
 本当にそれは良かった。よもや朝比奈さんもえらく喧嘩が強くて、血まみれ弁天のみくるとか二つ名で呼ばれていたらどうしようかと思いましたよ。
「血まみれ、弁天ですか?」
 すみません。この間見た映画で、そんな名前のガンマンの女性がいたんです。あまり気にしないでください、朝比奈さん。
「そして、長門さんは、これまたすごい役でしてね。どうやら裏の総長という顔を持っていることになっているらしいです」
「………」
 ほらみろ。さすがの長門も何も言えないじゃないか。古泉も嬉しそうにニコニコ説明してるんじゃない。
「あ〜ったく、どこの昭和な漫画だよ…。総長だの、裏総長だの。関西連合って普通有り得ないだろうが。他県の高校と繋がって一体何しようってんだよ」
「当たりです。この漫画自体は昭和刊行ですから、少々時代外れの設定のようですよ。きっと涼宮さんの従兄弟のお兄さんという方は、三十代くらいの方なのでしょうね。ちなみに涼宮さんはこの世界では何の役割を持っていない、あくまでも傍観者の一人ということになっているようです。風邪を引いて身動きが取れないのですから仕方がないでしょうね。でなかったら、きっと総長は涼宮さんの役割で、副総長があなただったでしょうから」
 冷静な判断をしてから、古泉はニコニコ笑顔を引っ込めてふいに真面目な顔つきになってこう付け足した。
「これは僕の予想なのですが、これからあることが起きる筈です」
「なんだよ、あることって」
「この漫画の展開にもあることなのですが…」
 言いかけた途端、がらりとすごい勢いで扉が開かれた。
 こんな派手に扉を開ける奴はハルヒ以外は有り得ない話なのだが、今回ばかりはこの文芸部は色々な人間の出入りをする場所らしい。見知らぬ生徒が青い顔をして飛び込んできたのだ。
「総長!大変です!関東の奴らが!」
 そいつ一人ではなかった。背後には、何人かの屈強な男子生徒と目つきの鋭い女子生徒達が立っている。
「総長、ついに関東連合がきました」
「今日は顔見せというところですかね」
「こんな風にここに乗り込んでくるからには、戦争に決まってますよっ!」
 ああ、もう。一斉に叫ぶなよ。
 古泉が彼に言われて、窓から校庭を見下ろしている。
「おや、やはり」
「何がやはりなんだよ」
「言ったでしょう?あることが起きるって。僕たちはこれから、あの方々と対決しないとならないんですよ」
 あの方々と指で指されて、俺は古泉の隣に立って校庭を見下ろした。
「うわっ…」
 黒い塊、と言っても差し支えのない人数が校庭に侵入しているではないか。つまり関西連合があるなら、関東連合もあるってことだ。それに対抗するかのように北高の人間も何人か集まっている。
「さて、僕らも下に下りて行かないとならないでしょうね」
 ねえ?とここに飛び込んできた奴らに問いかける古泉に、彼は口々に「お願いします、古泉さん!」「副総長!」とはやし立てた。おまえも、結構人望のある設定なんだな。
「涼宮さんの風邪が治って明日登校してくれれば、今日だけで終わるイベントです。どうぞ腹を決めてください」
 なんてニッコリ笑ってから、こいつは完全に役に入ってくれた。
「さ、総長」
 はあ、仕方がない。俺の平々凡々な生活よ、早く復活してくれ。
「裏総長なんて肩書きのおまえが出なくてもいいくらいには頑張ってくるよ、長門」
「そう。でも、私は私の役割はこなす。無理はしないで」
 心強い台詞を背に、俺は校庭にいる奴らと相対する為に、古泉を連れ立って部室を出る。まったく、なんなんだろうなこの気分の高揚具合は。役割ついでに気の持ちようまで変わってきたようだぞ。
 やはり隣にいる古泉も楽しそうな顔をしていた。やだね、喧嘩が三度の飯より好きみたいな人種。つまりは今の俺たちなわけなんだが。
 俺が見ていることに気が付いたのだろう。古泉が「どうしましたか、総長?」とか言いやがるから、俺も興に乗って言ってやった。
「おまえは、俺の片腕なんだろ?俺の背中は預けたからな、副総長」
 なんて漫画にありがちな台詞だったのに、おいおい古泉よ。そこで赤くなるのは、全然駄目だな。リテイクだ。
 さて、そんなこんなで俺たちは新たなる敵と立ち向かうのだった。
(完!今まで応援ありがとうございました。涼宮先生の新たなる新作「魔女っ子みくる」を次週お楽しみに!)
 って、どうやらこの漫画は打ち切りだったらしいぜ、古泉。
 明日は普通に登校してこいよ、ハルヒ。さて、魔女っ子みくるでの俺の役割は一体なんなのやら。まったく、やれやれだ。