「ねえねえ、キョン!このゲームのこの白い髪の男の人って、古泉君に声がそっくりなんだって!あんた、ちょっとプレイして、それを検証してちょうだいよ!」
はっきり言って、意味がわからん。クラスメイトの方々も、あまりハルヒにくだらん情報を流さないでいただきたい。俺にダイレクトに被害がこうむるのだからな。
自分でやればいいだろうがと、当然俺は言ったさ。あ〜言ったとも。だが、あのこらえ性の無いハルヒがこんなまどろこっしい恋愛ゲームができるのかと言えば、正直できる筈もなく。俺は休み明けに、このゲームのプレイ内容を録画して持っていく羽目になったわけだ。
パチンと電源を入れる。黒いPS2の機体に埃がたまってるのは、いかに俺がこれに触ってなかったかの証拠だろう。よもや久々のプレイが、女性向け恋愛シミュレーションゲームだとは、このPS2君も思いもよらなかっただろうよ。
「え…っと、名前入力か」
もう、どうでもいい。俺の名前でも入れておくか。本名も恥ずかしいから、キョンでいいや。キョン様にするかな。古泉っぽい奴に「様」呼ばわりされるのも、なかなかに面白おかしいだろう。
結局、キョンのままにスタートした。
「さてと、古泉に愛でも囁かせてみるか」
俺は、とことん投げやりになっていたんだと思う。でなかったら、こんな酔狂な真似をする筈がない。
カレーを食べながら、なかなか出てこない古泉の声に似た奴を待ち、俺は一人無我の境地で、このキラキラしいゲームを始めることになるのだった。